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早めに帰ることができた&旦那が飲み会なので、最寄り駅近くの古本屋に寄った。
気になっている古い小説と、同じく気になっている完結したマンガを探すためだ。

…とはいえ、立ち読みの魔力に抗えるはずもない。
文庫マンガのコーナーで「め組の大吾」を立ち読みしていたときのこと、彼らは現れた。
それはけたたましく喋る50くらいの奥さんと、店のバイトとおぼしき青年だ。
どうやら、奥さんは「あさきゆめみし」を探しているらしいのだが、青年の「マンガの文庫は作者順に並んでいます」という説明に耳を貸す様子はなく、ひたすらにタイトルを連呼している。…これでは見つかるはずもない。
元々、古本屋に寄ったのも、降って湧いた時間の慰めだったので、気まぐれを起こしてみた。
幸い、有名なマンガだったので作者=大和和紀の名前は覚えていた。文庫の2と3はあったので、「お探しの本はこれではないですか?」と差し出した。
…今思えば、それも運命だったのだろう。
結果として、バイトの青年と奥さんの仲立ちをするような形で、30分程度を潰すことになった。最終的に古本屋の売り上げに貢献できなかったのは、非常に残念である。奥さんは何も買わずに帰っていった。

…奥さんがそれを探していた理由は簡単なことだ。
社会人の娘が、会社の同僚にその本を読み始めたことを話したところ、同僚がそれを読みたいと言う。
娘は、自分の本が自分のあずかり知らないところで読まれるのは我慢ならない性格だ。
折り悪く、娘は気候の変化に耐えられず風邪を引いてしまう。
そして、母に頼むことには「あさきゆめみしを古本屋で探してきてくれないか」と。
母は、古本屋を3件もはしごして、娘のためにそれを探すのだった。

簡単に話すと、ツッコミどころはあるものの、いい話ですね。
だけど、あの奥さんの強烈な押しの強さと個性に、すべてはかき消されてしまうのですよ。
大学1年だというバイトの青年は、運が悪かったと思ってあきらめてもらいたい。ああいう客もいるものです。

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