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せかせかと職場に向かう途中、視界の端に何か違和感を感じて振り返ると、目線よりちょっと上ぐらいの高さに鴉がとまっていた。
竹藪沿いに立っているポールの上でふんぞりかえっている様子は、どこか愛らしくも見える。
個人的に鴉にイヤな思い出もないし、あまり至近距離でも怖いとは思わず「あぁ、ハシブトさんだな」ぐらいに認識して、すぐに視線を前に戻して通り過ぎた、その瞬間。
ぼすん、という軽い衝撃。
振り返れば、元の場所にとまり直した鴉が「ふん、なにか?」みたいに素知らぬ顔でそっぽを向いている。
頭の触感を信じれば、両足で頭を軽く掴まれ、すぐに離されたものと思われる。
決して痛くはないんだが、なんだかビックリした。
次いで考えたのは、これから出勤なんだから、頭が変に汚れていないといいんだけど、ということ。

むかし、鳩に餌をやっている時に、豆に群がる鳩が頭にとまったことがあったんだけど、あれに比べれば痛くもないから、怖くもない。
テレビや何かで鴉に足蹴にされる市民、みたいな映像を見たことはあったけど、まさか、体験することになるとは……!
ここまでくると、何だか感慨深い。
おそらくは一度振り返って目線を合わせてしまったのが良くなかったんだとは思うんだけど、面白いこともあるもんだ。

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